文通で少しずつ相手を知る楽しさ
文通は知らない人同士で手紙のやりとりから始まります。
初めての手紙を書くときには、相手がどんな人なのかなとドキドキしますよね。
返事を受け取っても、そこに書かれていることは決して多くはありません。
「どんな人なのかな」
そう思いながら手紙を交わし、相手のことを知る速度は、本当に少しずつ。
思いがけない共通点が見つかったり、意外な一面を発見したり、一つひとつの手紙を通して、ゆっくりと相手を知るのは、他の人間関係にはない味わいがあります。
手紙のうえでは、相手の言葉で語られたことが全て。
言葉を語る時の表情や仕草は、もちろん、知ることはできません。
顔を合わせてのコミュニケーションに比べると、情報量は圧倒的に少ないでしょう。
メールのようにあっという間に返事が返ってくるようなこともありません。
その代わり、たっぷりとあるのは、何を書こうかと考える時間です。
勢いやその場の雰囲気に流されることなく、よく考えられて書かれた言葉ですから、その人の奥底にあるものが表現されやすいのではないでしょうか。
毎日顔を合わせる職場の知人より、月に1度やりとりをする文通相手の方が、自分の本心を打ち明けられるかもしれません。
時間がたっぷりとあるのは、受け取る側にとっても同じことです。
1回の手紙で知ることのできる情報はわずかですし、手紙は次から次へと送られてくるものではありません。
次の手紙を待つ間、書かれたことについて思いを巡らせることができるのです。
文章の印象から「優しい人なんだろうな」と感じたり、大らかな文字を見て「性格も同じようにのびのびしてるのかな」と予想したり、くすりと笑ってしまうようなエピソードに「いつも楽しい人なのかな」とイメージを膨らませたり。
何回かやりとりをして相手のイメージができた頃、意外な特技や趣味が明らかになって、また相手の印象が変わっていくのも面白いもの。
そんな風に、お互いを少しずつ多面的に知っていくのも文通の醍醐味です。
時には、気になることを質問し合ってみるのもいいですね。
じっくりと時間をかけて考えられるからこそ、ありふれた質問でも、意外な答えに出会えるかもしれません。
たとえば、ただ「好きな色」を尋ねられただけで、その理由や、それにまつわるエピソードを思い起こして、話題が膨らんでいくようなこともありえます。
相手だけでなく自分の意外な一面に出会えることもありそうです。
ゆっくりとした手紙のやりとりに、「もっといろいろなことが知りたいのに」「もう少したくさんのことを書きたいのに」ともどかしさを感じてしまうこともあるかもしれません。
でも、インターネットで知りたいことは即座に知ることができる時代、文通を通じてそんな風に待ち遠しさを感じる関係は、どこか新鮮なものではないでしょうか。
時間をかけて丁寧に相手を知る楽しさを、あなたにもぜひ味わってみてほしいと思います。