繰り返し読み返したくなる手紙
小さな紙に書いた手紙
学生の頃、授業中、小さな紙に書いた手紙をこっそりと友達に回した。
そんな経験がある方は、どれくらいいるのでしょうか?
そこに書かれたのは、昨日見たテレビの話題や放課後の予定など、たわいもないことばかり。
後から読み返してためになるようなことは何も書かれていません。
それなのに、読み返すと、面白さと懐かしさにたまらない気持ちになり、いつまでも捨てることができないのです。
そんなちょっとした手紙でさえそうなのですから、
誕生日に受け取ったポストカードや、離れ離れになってしまった友達からの葉書、家族から送られた手紙などは、もちろん手放すことができません。
折に触れて取り出され、何度も何度も読み返されます。
手紙を読むたびに呼び起こされる感覚
手紙を読む度に当時の記憶が鮮明に呼び起こされる感覚は、メールなどでは味わえないもの。
まるで封筒の中に、その時の空気と感情が閉じ込められていたかのようです。
書かれた内容だけでなく、使われている便せん、相手の筆跡など、全てに懐かしさを感じることができます。
元気がない時に読み返せば、近しい人からの言葉に励まされますし、楽しいエピソードには何度読んでも笑みがこぼれることでしょう。
手に取るだけで、記憶が次々とあふれてくるのは、手紙ならではの力と言えるのではないでしょうか。
何度も読み返すのは、手紙を受け取った人だけではありません。
書いた本人も、自分の文章を何度も読み返すことができます。
手紙は、一度投函してしまえば、自分の手元には残らないもの。
後から見返すことはできないと思うと、自然と丁寧に慎重に言葉をつづるようになります。
書いている途中から、自分の気持ちがきちんと書かれているかを確かめ、書き終わってもおかしなところがないかと見返す。
そうやって何度も読み返していくと、自分の文章が自分の中にと沁み込んでいくような気持ちになります。
長い年月をこえて大切にされるのも、手紙ならではでしょう。
祖父母や両親の手紙を見つけて、過去の出来事を知るといった小説や映画のストーリー。
昔の文豪の手紙が発見され、新たな事実が判明する。
どちらも、手紙というものが大切に保管され、読み返されてきたからこそのエピソードです。
あなたがこれから書く手紙も、あなたの元を離れた後も相手のそばにずっと残り、何度も読み返されるかもしれないと思うと、ますます心を込めて言葉をつづりたくなるのではないでしょうか。
「今書いている一言が、もしかしたら時を越えて残り続けるかもしれない。」
そんな風に考えながら手紙を書く時間は、
これから流れていく時を感じられる素敵なひと時になることでしょう。