ゆっくりと日々を振り返る

カフェで流れるゆっくりとした時間

今という時代は、

当たり前のようにあらゆるものが目まぐるしく動く時代です。

生まれてからずっと、そんな言葉を耳にしている気がします。

つまり、もうずいぶん前から、時代のスピードは加速度的に速さを増しているということなのでしょう。

 

そして、最近はそのスピードをごく身近に感じる機会がぐんと増えてきました。

インターネットを通して物を買えば次の日には届き、メールを送ればすぐに返事が返ってきます。

ちょっと気になることも、検索すれば即座に判明。

 

そんな世の中ですから、

「やりたいこと」や「やらなければいけないこと」があふれ返り、

「退屈だ」と感じることなんて、ほとんどないように感じます。

 

もうすでに十分なスピードがあるにも関わらず、

時代の流れは刻々とその速度を速め、

私たちはその流れに置いていかれないようにすることで精いっぱいです。

のんびりすることに、なんだか罪悪感を覚えてしまう。

そんな人も少なくないでしょう。

 

先へ先へと急ぐあまり、ほとんどの人が、現在や過去を振り返る時間を持っていません。

周囲の物事も、効率的であることが最優先され、短い時間で処理をすることが「よし」とされています。

公園のベンチ

 

たとえば、手紙に書かれる気候のあいさつ。

これも最近では不要なものと考えられがちです。

 

ビジネスメールなどでは、

手短に要件のみを伝えるべきと考えられ、

古い慣習にこだわる姿勢は古くさいものと疎まれることさえあります。

 

もちろん、時間というのは有限で貴重なもの。

効率的に物事をすすめることは、決して悪いことではありません。

 

でも、あまりにそれだけを求め続けると、

他の大切なものを取りこぼしてしまう気持ちになります。

 

儀礼的なものに感じる気候のあいさつも、

もともとは相手と季節を思いやる気持ちから生まれたものです。

 

時には、その決まりきった言葉に、自分の思いやりを詰めるのも、そう悪いことではないはず。

 

 

時には日々を振り返ることも大切。

 

時には日々を振り返ることも大切。

 

そう考えながら走り続ける私たちは、

意識して時間をとらなければ、

ゆっくりと自分のことを考えることもできないのかもしれません。

 

そんな時に、その振り返りの時間をプレゼントしてくれるのが文通です。

カフェで文通

 

わざわざ見知らぬ相手と手紙を書き合うなんて、

効率だけを考えたら無駄なことかもしれません。

 

その時間を使って、他にできることはたくさんあるでしょう。

 

でも、遠い誰かのために手紙を書くとき、

人はあらためて自分について思いをめぐらせます。

 

どんなことを書こうか、

どんな風に書こうか、

最近どんなことがあって、

自分はどんなことを考えているんだろう。

 

いつもは気に留めない、

日々のささいなことを振り返り、

自分の感情をさぐります。

 

そしてその思いを、

相手に伝わるように文章にして、

文字に起こすのです。

 

それは片手間ではできない、

じっくりと時間をつかわなくてはいけない

贅沢な行為とも言えるでしょう。

 

ゆっくりと椅子に座り、

まっさらな便せんに向かって

好きな飲み物でも飲みながら

丁寧に手紙を書く時間は、

忙しない日常から切り離された特別なものに感じます。

 

その時間は、

あなたがあなたに贈る優雅で贅沢な贈り物です。

 

時々その贈り物を受け取るだけで、

人生そのものが少し豊かになる、そんな風に思うのです。

 

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